◆ はじめに|空き家は「持ってるだけ」で劣化する
「まだ売るつもりはないし、しばらく空き家のままで…」
「相続してとりあえず様子見」
そんな状態の家が、たった1年で重大劣化を起こすことがあるのをご存知ですか?
住宅は、人が住まなくなった瞬間から「劣化スピードが倍加する」といわれます。
つまり、放置=加速劣化なのです。
◆ 【現実①】たった1年で起きる「雨漏りと壁内カビ」
空き家は換気・通電・通水が止まり、内部の湿気が滞留します。
その状態で梅雨や台風シーズンを迎えると…
- 雨漏りが起きても誰も気づかない
- 内壁内の断熱材にカビが広がる
- 床下の構造材が黒ずみ、腐食が始まる
しかも室内の空気のよどみがこれをさらに悪化させ、
「外からは異常が見えないのに、内部はボロボロ」という状態になります。
◆ 【現実②】水を流さないことで配管が腐食・封水切れ
空き家の排水口には、通常“におい止め”の水(=封水)が入っていますが、
これが数週間で蒸発すると…
- 下水臭が家じゅうに逆流し、建材ににおいが染み込む
- 湿気が構造材に伝わり、シロアリ・カビを呼ぶ
- 配管内部が空気にさらされ続け、酸化して腐食が始まる
配管劣化は修理が高額化しやすく、1年の放置が数十万円規模の修繕に直結します。
◆ 【現実③】草木の繁茂→害虫発生→近隣から苦情
人の出入りがなくなると、草木が短期間で生い茂ります。
特に日当たりのよい南側や裏庭は要注意。
- ツル植物が外壁・サッシに巻き付く
- 害虫や小動物の巣になりやすくなる
- 近隣住民が「景観や虫被害」に不快感を持つようになる
さらに市区町村から「空き家対策の指導対象」としてマークされることもあり、
所有者に通告・指導が届くケースも珍しくありません。
◆ 【現実④】空き巣・不法侵入・放火のリスクが上がる
空き家は「誰もいない」と知られることで、犯罪ターゲットになりやすくなります。
- 郵便物が溜まる・カーテンが常に閉まっている
- 雨樋や門が壊れたままになっている
- 雑草や落ち葉が片付けられていない
こうした外観の変化は、空き巣犯に「この家は無人」と判断されやすく、
不法侵入や放火の被害につながる恐れもあります。
◆ なぜ「放置」が最悪なのか?
放置の何が悪いか。それは“連鎖的な劣化”が始まるからです。
- 雨漏り → 断熱材のカビ化 → 空気中の胞子増加 → 材料腐食
- 封水切れ → 下水臭 → 室内のにおい定着 → 資産価値の大幅低下
- 草木放置 → 害虫 → 室内への侵入 → 建材劣化や衛生悪化
つまり、「何かが起きてから」ではなく、
何もしていない状態こそが“最初の引き金”なのです。
◆ 対策①|最低限の“月1メンテナンスルーティン”を作る
空き家を劣化から守るために、最低限やるべき具体行動は以下の通りです。
🔁 1ヶ月に1回の通風・換気
- 晴れた日に窓を30分以上全開放(北と南を同時に開けると理想的)
- 押し入れ・クローゼット・下駄箱もすべて開けて空気を循環
- 小型USBファンやサーキュレーターを持参して「空気の通り道」を作る
💧 排水口の封水を補充する
- 洗面台/浴室/洗濯機置場/キッチンシンクの排水口に
それぞれコップ1杯(約200ml)の水を注ぎ入れる - できれば、月に1度“排水トラップ用の防臭キャップ”を軽く押して異常チェック
🌡 湿度と温度を計測・記録
- 湿温度計を室内と床下近くに設置し、目安を記録(目標:湿度60%以下)
- 夏場:湿度70%超が連続する場合、除湿剤パックを各部屋に3〜5個設置
🚪 ドアと窓の開閉確認
- 玄関ドア・ベランダサッシ・勝手口など可動部すべてを開閉
- 雨漏りの兆候(軋み音・閉まりにくさ)がないかもチェック
🧽 玄関・外回りの草木・落ち葉除去
- 草は根元からむしり取る(残すと翌月に倍増します)
- 建物周囲1m以内に植物の枝葉や積もった落ち葉がない状態をキープ
◆ 対策②|「管理が難しい人」のための委託方法(費用目安付き)
🏠 空き家管理代行サービスを利用する
- 地元の不動産会社やハウスメーカーが提供していることが多い
- 月1回巡回/換気・通水・郵便回収・報告書付きで月3,000〜6,000円が相場
🛠 建築士や工務店の「床下点検パック」
- 年1〜2回、シロアリ・床下湿気・構造チェックまで対応
- 写真付きレポートが出る場合もあり、費用は1回15,000〜30,000円程度
🧓 高齢・遠方の方は行政サービスも確認
- 市区町村によっては「空き家バンク」「地域見守り」制度を導入していることも
- 登録するだけで無料または格安巡回チェックをしてくれるケースあり
◆ こんな「見える変化」が出たらすぐ対応を
✅ 玄関ドアが重くなった・開けにくくなった
✅ 雨樋やベランダの排水口に草が生え始めた
✅ コンクリートや基礎に白い粉(エフロ)が見える
✅ 室内に「かび臭」「すえた臭い」が漂ってきた
→ この場合は、「様子見」せず、すぐに専門点検+内部乾燥処置を行いましょう。
◆ まとめ|空き家は「静かに壊れていく」
家は、人がいないことで音もなく壊れていきます。
- 誰も気づかないまま始まる雨漏り
- 湿気により腐っていく構造
- におい・虫・劣化の連鎖
1年間放置した空き家が「次の住人を迎えられない状態」になることも珍しくありません。“今は使わないからこそ、守らなければならない”。
そう考えられるかどうかが、空き家を「負動産」にしない分かれ道です。