使っていない土地、相続したけど管理できない土地…「いっそ国に返せたら」と思ったことはありませんか?実は今、そんな悩みに応える「相続土地国庫帰属制度」という仕組みが注目されています。でも、手続きには条件があり、費用もかかるのが現実。
この記事では、元・不動産事務で現在不動産ライターの私が、土地を国に返すための具体的な方法や費用の目安、山林など特殊な土地の注意点まで、わかりやすく解説します。将来の不安を手放すヒント、ここにあります。
土地を国に返す費用とは?相場と内訳を解説
国に土地を返すのにかかる費用は?
土地を国に返すには、基本的に「相続土地国庫帰属制度(そうぞくとちこっこきぞくせいど)」を使う形になります。この制度は、いらなくなった土地を一定の条件下で国が引き取ってくれるというものです。ただし、手放す際には「費用がゼロ」というわけではなく、申請者側にかかるお金がいくつかあります。
まず、大きく分けて「申請手数料」と「負担金」という2種類の費用がかかります。
申請手数料は、土地1筆あたり14,000円です。これは審査にかかる費用という位置づけで、審査の結果、不許可になったとしても返ってきません。つまり、通るかどうかわからない状態でも先に支払う必要があるんですよね。
そしてもう一つ、「負担金」というのがあって、こちらがなかなかの金額になります。負担金は、管理や処分にかかる費用を申請者が一部負担するというもので、数十万円になるケースも珍しくありません。たとえば住宅地や利用価値がある土地であれば20〜30万円前後になることが多く、手入れがされていない土地や不整形地などはもっと高くなることも。
費用は土地の状況によって変わるので、最終的な金額は個別に評価されます。「要らない土地だから、ただで国が引き取ってくれる」と思ってしまう方も多いのですが、実際には意外とお金がかかるものなんです。
ですので、返す前には「売れないか」「誰かに譲れないか」といった可能性を探るのも一つの手です。費用だけでなく、手続きも時間がかかるので、早めに動き出すのがおすすめですよ。
山林を国に返すときの費用は?
山林を国に返したいという相談も、実はとても多いです。我が家でも親戚の名義になっていた山林の扱いでちょっと悩んだことがあって、意外と身近な問題なんですよね。
山林も基本的には「相続土地国庫帰属制度」を使って手放すことができますが、住宅地や農地よりもハードルが高めです。まず前提として、山林が制度の対象になるには、管理が行き届いていて、他人の権利が絡んでいないことが条件なんです。たとえば木が倒れて隣地にかかっているような場合や、私道と接していない山奥の土地はNGになることが多いです。
費用面で見ると、山林は一般的に「負担金」が高くなる傾向があります。具体的には、20〜50万円程度かかるケースも。というのも、山林は現地調査や管理コストが高く、国側としても手間がかかるからなんです。しかも、地形が急だったり、アクセスが悪い場合はさらに費用が上がる可能性があります。
「使わないし、いっそ手放したい」と考えても、山林は維持費も低いから放置されがち。でも、固定資産税がわずかでもかかっていたり、倒木などのトラブルのもとになったりすることもあるので、思いきって手続きを進めた方が安心な場合もあります。
返せる条件や費用感を知るためにも、まずは法務局に相談してみるのがおすすめです。判断材料が増えると、どう動くべきかも見えてきますよ。
土地を国に返すには?条件や手続きの流れ
国に返すための土地の条件とは?
いらなくなった土地を国に返せたら…って思う方、多いと思うんです。我が家でも、「使っていないし、固定資産税もかかるし」と悩んだことがありました。でも、実はどんな土地でも無条件に引き取ってもらえるわけではないんですよね。
国に返すには「相続土地国庫帰属制度」を使うことになりますが、この制度を使うためにはいくつかの厳しい条件があります。
まず大前提として、その土地が「単独で処分可能」であることが必要です。たとえば、他人の所有地と一体化していたり、境界がはっきりしていなかったりする土地は、申請しても通りにくいんです。また、通路がまったくない山奥の土地や、他人の権利(地役権や借地権など)がついている土地もNGとなります。
それから、建物や工作物がある場合は、すべて撤去して更地にしておく必要があります。古い家が建ったままでは申請が通らないので、「どうせ手放すから」と放置していた場合、解体費用が必要になるケースも多いんですよ。
さらに、土地に汚染がないことや、崖など安全性に問題がないことも条件に含まれます。ここまで聞くと「なんだかハードル高いな…」と感じるかもしれませんが、逆に言えば、しっかり管理されてきた土地であれば、可能性は十分あるんです。
「ただ不要だから」といってすぐ返せる制度ではないのが現実。まずは、ご自身の土地がどの条件にあてはまるか、専門家や法務局などに相談してみるといいですよ。
国に土地を返すための手続き方法
土地を国に返すには、「相続土地国庫帰属制度」を通じて手続きする必要があります。この制度、2023年からスタートした比較的新しい制度なんですが、「やっとこういう仕組みができた」と感じた方も多いかもしれませんね。
手続きは、まず法務局への申請から始まります。申請は土地1筆ごとに行い、申請書類とあわせて地図や登記事項証明書などを提出します。もし建物がある場合は、解体して更地にした証明も必要になります。
申請時には、申請手数料として1筆あたり14,000円が必要です。注意したいのは、これは審査にかかる費用で、万が一申請が却下されても返金されない点です。なので、「条件に合っているか不安…」という場合は、事前に相談窓口を活用するのがおすすめです。
申請後は、法務局が土地の状況を調査し、「この土地なら受け入れOK」となれば、負担金の納付が求められます。負担金の金額は土地ごとに異なりますが、一般的には数十万円かかることもあります。
負担金の納付が完了すると、晴れてその土地は国に引き取られることになります。この一連の流れには数ヶ月かかることもあるので、余裕をもって進めるのが安心です。
初めてだと難しそうに感じるかもしれませんが、法務局では事前相談も受け付けてくれています。書類の準備なども含めて、じっくり確認しながら進めましょう。
土地を寄付できる条件と注意点
「もう使わないし、国に寄付できたらいいのに」と思ったこと、ありませんか?実際にそういう相談、けっこう多いんです。でも現実には、土地を寄付できるケースってすごく限られているんですよね。
まず大前提として、日本では基本的に、土地を一方的に国に寄付することはできません。国側にも管理コストがかかりますし、「使い道がない土地を受け取っても困る」という背景があるからです。
例外的に寄付を受け付けてもらえるのは、例えば公共施設用地として明確に使えるような土地。たとえば、防災倉庫を建てる計画がある自治体で、「この場所がぴったりだ」というケースなどです。こうした例を除けば、一般的な空き地や山林などをそのまま寄付するのは難しいのが現状なんです。
それでも、どうしても手放したい場合は「相続土地国庫帰属制度」を使う形になりますが、こちらは「寄付」ではなく「申請+審査+負担金あり」で、条件も厳しめ。
また、よくある誤解なのが、「自治体に相談すれば引き取ってくれるかも」という話。実際にはほとんどの自治体で「不要な土地の寄付は受け付けていません」と明言されています。うっかり相談して断られると、がっかりしちゃいますよね…。
ですので、寄付というよりも、「制度を使って合法的に処分する」という考え方が現実的です。自治体や法務局に直接聞いてみると、その土地の可能性が見えてくるかもしれませんよ。
相続土地国庫帰属制度の費用と注意点
相続土地国庫帰属制度の費用内訳
相続土地国庫帰属制度を使って土地を手放すには、いくつかの費用がかかることを理解しておく必要があります。「国が引き取ってくれるならお金はかからないんじゃないの?」と思われがちですが、実際には申請者の負担もあるんですよね。
まず発生するのが、申請手数料です。これは法務局へ申請する際に必要で、1筆の土地につき14,000円かかります。この金額は審査料のようなもので、仮に申請が通らなくても返金されないんです。だからこそ、無駄にしないためにも、事前に制度の条件に合うかしっかり確認しておくのが大事です。
次に大きな負担となるのが、負担金という費用です。これは、国が引き取った土地の管理・処分にかかる費用を、申請者が一部負担するという考え方。負担金の金額は、土地の種類や状態によって変動します。住宅地なら20万円前後になることも多く、条件が悪ければもっと高くなる可能性も。
このほかにも、建物が残っている場合は解体費用、境界が不明な場合には測量費など、土地の状況によって別途費用が発生することもあります。我が家のケースでも、古い物置の撤去で数万円かかったことがありました。
「ただ土地を国に返すだけ」と思っていたら、思わぬ出費があるかもしれません。全体の流れを見据えて、余裕のある資金計画を立てておくことが大切です。
相続土地国庫帰属法で負担金が高い理由
負担金の金額が高い…と感じた方、多いのではないでしょうか。実際、申請してから「こんなにかかるの?」と驚いたという声もよく聞きます。でも、この負担金にはちゃんとした背景があるんです。
まず、国が引き取った土地は、その後も維持管理や処分が必要になります。たとえば、草刈りや周辺への安全確保、そして将来的に売却・活用される可能性もあるので、その準備として一定のコストがかかるんですよね。
また、土地の場所や形状によっては、管理がかなり手間のかかるケースもあります。特に接道していない土地や、崖地、変形地などは調査や対応が難しく、国としても“リスクのある資産”を引き受けるようなもの。そういった場合は負担金が高くなる傾向があります。
実際には、1件ごとに専門の審査が行われ、手間やリスクが見込まれる土地ほど、負担金が加算される仕組みなんです。つまり、申請者ごとに金額が変わるというわけですね。
「国に返すんだから、無料でいいのでは?」と思いたくなる気持ち、よくわかります。でも、税金でまかなうにも限界があるので、ある程度は申請者が負担する必要がある、というのが制度の設計なんです。
費用の見積もりが事前に出るわけではないので、予想以上の金額になる可能性も考えておきましょう。
山林の帰属で注意すべきポイント
山林を相続して困っている…という声、本当に多いです。親が昔買ったけど場所もよくわからない、なんてパターン、うちの親族にもありました。でも、相続土地国庫帰属制度を使えば、そんな山林も手放せる可能性があるんです。ただし、いくつかのポイントには注意が必要なんですよね。
まず、山林は住宅地と比べて管理が行き届いていないケースが多いため、審査が厳しくなる傾向があります。たとえば、倒木があったり、地形が急で危険だったり、他人の土地との境界があいまいだったりすると、申請が通らない可能性が高くなります。
それから、山林はそもそも「人が立ち入りづらい」場所にあることが多いので、現地確認や測量に時間がかかるという問題も。そうなると、負担金も高くなる傾向があります。30万円〜50万円以上かかったというケースも実際にあるんです。
加えて、私道がない、アクセス道路が崩れているなどの理由で、物理的に立ち入れない土地は、引き取りそのものが不可になることもあります。こうなると、「結局売ることも手放すこともできない」状態に…。
ですので、山林の帰属を検討している場合は、まず現在の状況をしっかり確認することが大事です。場所や地番がわからないなら、法務局や役所で調べることも可能ですし、必要に応じて土地家屋調査士に相談するのもひとつの手です。
「山だからどうせ無理かな」とあきらめる前に、まずは条件をチェックしてみてください。意外と道が開けることもありますよ。
国が土地を引き取る他の制度とは?
国が土地を買い取る制度の仕組み
「売れない土地、国が買い取ってくれる制度ってあるの?」と聞かれることがあります。確かに“国が引き取ってくれる制度”はありますが、「買い取る」かというと…ちょっとイメージと違うんですよね。
よく誤解されがちなのが、「相続土地国庫帰属制度は国が土地を買い取る制度」という認識。でも実際には国が“引き取る”制度であって、“代金を支払って購入する制度”ではありません。この制度では、申請者がむしろ費用を支払って手放す形なんです。
一方で、正確に「国が土地を買い取る」という意味では、たとえば公共事業で必要な土地を買収するケースがあります。たとえば道路や公園の拡張などで、そのエリアの土地が必要になると、行政(国や自治体)が所有者に買い取りの申し出をしてくるんです。この場合は当然、相場に基づいた価格が支払われます。
ただし、これはあくまで「必要な土地に限る」もの。不要な空き地や山林を「買ってください」とお願いしても、国が応じることはほとんどありません。
似たような制度で「農地中間管理機構」が農地を一時的に借りたり、買い取ったりするケースもありますが、これも条件が厳しく、個人で自由に利用できる制度ではないんですよね。
ですので、「国に買い取ってほしい」という気持ちがあっても、実際に使える制度は「買い取り」ではなく「引き取り」に近い形になります。「いくらで買い取ってもらえるのか」と期待するよりは、「どうすれば手放せるか」に視点を変えるほうが現実的です。
土地を寄付する場合との違い
「土地を国に寄付できるなら、それが一番いいんじゃない?」と思う方も多いと思います。実は、私も昔そう思って調べたことがあるんです。でも、寄付と国庫帰属制度って、似ているようで中身はまったく違うんですよね。
まず「寄付」というのは、あくまでも無償で相手に所有権を譲る行為のこと。相手が国でも、自治体でも、受け取る側が「それ欲しい」と思わない限り、成立しません。つまり、いくらこちらが「寄付したい」と申し出ても、国や自治体に断られたら終わりなんです。
それに対して、「相続土地国庫帰属制度」は、申請すれば審査を経て受け入れてくれる可能性がある制度です。ただし、寄付とは違って申請者が費用(申請手数料+負担金)を支払う必要があります。国からお金をもらうどころか、逆に支払う立場になるのが大きな違いです。
また、寄付は相手先が特定できる・活用が明確な場合に限られるので、住宅街や公共施設の予定地など「特別な条件が揃っている土地」でなければ受け入れられません。一方で国庫帰属制度は、そうした条件がなくても一定の基準を満たしていれば、申請のチャンスがあるのがメリットです。
もうひとつの違いとして、寄付は“相手ありき”の取引、国庫帰属制度は“制度に基づく一方的な申請”という点も押さえておきたいところ。交渉が必要かどうかという点でも、この違いは大きいですね。
「寄付できれば無料で済むのに…」と思う気持ち、私もすごく共感します。でも現実的には、制度の仕組みとして“寄付よりも手間とお金がかかる制度”が主流なんです。そう思うと、今のうちから準備しておくことって本当に大切ですよね。
国に返された土地はその後どうなる?
国庫に帰属した土地の取り扱い
国に土地を返したあとは、その土地がどうなるのか気になりますよね。我が家でも、「返したら放置されるの?それとも活用されるの?」と疑問に思ったことがありました。
実際には、相続土地国庫帰属制度を使って国庫に帰属した土地は、国が正式に管理者となります。ただし、すぐに活用されるケースはあまり多くなく、基本的には「国有地」として管理され、必要に応じて処分や売却が検討される流れになります。
たとえば、再開発や公共施設の整備などでその土地が活用される場合は、自治体などに売却されたり、貸し出されたりすることもあります。とはいえ、ほとんどのケースではしばらくのあいだ国が静かに保有し、動きがないままの状態が続くことも多いようです。
ひとつ安心材料としては、帰属後の管理は国が担うので、元の持ち主に管理義務や責任が残ることはありません。「草が伸びたらどうしよう」「近隣から苦情が来たら?」といった心配は不要です。
ただし、逆に言えば、「売ったような対価」や「活用の報告」が来ることもないので、感覚としては“役所に返却した私物”に近いかもしれません。自分の手を離れて終わる、それがこの制度のゴールなんですよね。
返した土地がどうなるか気になる気持ちはあると思いますが、所有していたときの負担から解放されること自体が、大きなメリットだと私は感じました。
相続土地国庫帰属制度の10年後の見通し
この制度、実はまだ新しくて、2023年に始まったばかりなんですよね。なので「10年後どうなってるの?」と聞かれると、はっきりとは言えない部分もありますが、いま見えている流れから予測できることはあります。
まず前提として、この制度は今後も需要がどんどん増えると見られています。少子高齢化の影響で、相続される土地のなかには「使い道がない」「管理できない」という理由で、放棄したいという声が全国で増えているんです。特に山間部や農村地域では、放置される空き地が深刻な問題になってきています。
それを受けて、国もこの制度を軌道に乗せるために、今後さらに制度の柔軟化や見直しが進む可能性があります。たとえば、申請の条件が一部緩和されたり、手数料や負担金の見直しが行われるといった動きが出てくるかもしれません。
また、自治体との連携も進んで、返された土地が地域で活用されるケースも増えていくのでは…という期待もあります。今はまだ「返して終わり」という形ですが、地域再生や公共活用とつながるような活用が広がれば、制度の価値もさらに高まると思います。
ただし、逆に申請者が増えすぎて、審査に時間がかかるようになるリスクも考えられます。「早めに申請しておいてよかった」と感じる日が来るかもしれませんね。
10年後には、より身近な制度として定着していて、「困ったらこれを使えばいいよね」という安心材料になっているといいなと思います。これから土地の相続が控えている方は、今のうちに知識を備えておくだけでも、大きな差になりますよ。
まとめ
土地を国に返す制度は、「手放せば終わり」と思いがちですが、実際には条件や費用、手続きの手間など、しっかりと理解して進めることが大切です。山林や使っていない土地を持ち続けるリスクや、知らずに損をしてしまう可能性もあるからこそ、正しい知識が未来を変えます。私自身も「どうにもならない」と感じたことがありましたが、行動すれば選択肢は広がります。あなたの一歩が、将来の安心につながりますように。